考えることと行動すること/沼田起業塾

沼田起業塾の企業訪問で、これから起業を考えている20名ほどの方にご来店いただきました。その後、会場を移して1時間ほど話をさせていたのですが、その冒頭でグループワークをしてもらいました。

A4の紙に80個くらいのマス目を引いたものを用意して、漢字をひたすら書いてもらいます。ただし、「さんずい」のつく漢字限定。すると、意外に書けないんです。10個以上書ける方は3割ほどで、多くの方は5個〜10個ほど。一度ペンが止まると、う〜ん、う〜ん、と唸ってもなかなか出てこない・・・。

続いて、同じテーブルを囲むメンバーでお互いに書いたものを見せあいながら話し合っていただくと、どんどん数が伸びて、あっという間に30個を超えるグループが出てきます。今回は3人のグループだったのですが、個々人が10個以下しか書けていないのに、共有すると30個を超えてくることも。

何かを考えたり、ビジネスプランを描くことも同じようなことがあるかもしれません。自分一人で考えられることって、たかが知れているし、一度思考がストップするとなかなか前に進めない。それが、環境の変化だったり、誰かの話を聞いたりすることで新しい視点の何かがでてきたり・・・。

自分の場合は、醤油をつくっている現場に行くことや、その移動のための運転をしている時間が考えを整理する空間になっているのだと思います。考え込むより行動しなきゃとか、行動しながら考えるんだよって耳にすることもありますが、行動するからこそ考えが深められるような、そんな気がしています。

「道の駅さかい」に職人醤油58銘柄

道の駅さかい

高速道路のサービスエリアの進化はすごいですね。トイレを中心に改修が進んでいますし、新設された施設になると売店も食事処もすごく楽しい。

一方で道の駅。10年ほど前に醤油蔵をひたすら訪問していた時はすごくお世話になりました。トイレがあることが大きかったですし、その地域の地場の醤油に必ず出会える場所でもありました。当時はスマホがない時代。道の駅のガイドブックは使い込まれてぼろぼろになっています。

10年前と今とを比較すると、大きく変わっているかといわれると、そうでもないような・・・というより、道の駅ごとの差が大きいのかもしれません。

運営主体が地域の行政である場合が多いので、仕方がないのかもしれませんが、売場も食事処も充実していてワクワクするところもあれば、施設がどんとあってそれだけだったり、静かな売店がひっそりと運営しているだけだったり。

道の駅さかい

茨城県にある「道の駅さかい」。前々から職人醤油を扱っていただいています。農家さんが運んでくる農産物直売所やお土産ものも充実しています。珍しいものもたくさん。60銘柄弱まで商品数が増えてきたので、専用の什器を作って納めてきました。等間隔にまっすぐに並ぶとやっぱりきれい。

道の駅さかい
〒306-0400
茨城県猿島郡境町1341−1
0280-87-5011
http://www.town.sakai.ibaraki.jp/page/page000596.html

人と機械が感じる温度の違い/小笠原味淋醸造(愛知県碧南市)

小笠原さんと糀づくりの話をしていました。

蒸した米に麹菌をつけて繁殖をさせる工程。日本酒づくりなどで杜氏さんが汗だくになりながら米をかき混ぜながらしている、あの作業です。

一般的には2日〜3日かけて行うもので、職人が適切なタイミングで手入れをすることでよい糀ができあがります。

麹菌が育つと温度があがるのですが、上がりすぎても下がりすぎてもだめ。ちょうどよい温度と湿度の調整をしながら麹に手を入れるのですが、タイミング次第で出来栄えが変わってしまう繊細は作業。

この期間中、つくり手は気が気じゃないと皆が口にします。





とくに温度経過は大切。温度計でしっかりと測ります。

センサーとつなげて、設定していた温度になると自動で手入れがスタートする仕組みになっていたり、想定と異なる温度になると警告音がでるようにしている蔵元も多いです。





小笠原さんは「同じ35度でも、元気のいい35度と元気のない35度があるよね」と言います。温度計で測ると同じ35度。でも、手を入れた時の感じ方が違うそうです。

これからどんどん熱をあげていきそうな、そんな勢いを感じるのが元気のいい35度。当然、その後の対処の仕方も異なります。

このような感覚が、同じ作業をひたすら反復し続けることで身につく職人ならではのものなのでしょうね。

醤油蔵で出会った笑顔

職人醤油通信(メールマガジン)に書いた内容を記載。
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先日、愛知県から小豆島を経由して兵庫県の醤油屋さんに伺ってきました。

同行者は、大手の醤油メーカーの開発担当のNさん。

醸造や発酵に関する理論的な話はお手の物で、
私が何か質問しても、きちっと道筋立てて解説をしてくれます。

理論に偏ることなく物腰も柔らか。
そして純粋に醤油が好きっていうのが伝わってくる雰囲気で、
同世代ということもありますが、
個人的にもとても仲良くさせていただいている方なのです。





醤油屋に同業である醤油屋が立ち入るのは珍しいことだと思います。

しかも、大手と地方の伝統的な蔵元とでは、
お互いに暗黙のうちに遠慮しあうというか、
そもそも接点がないということもあると思いますが、
現場に入って話をすることはあまりないはずです。


今回、ある醤油蔵で印象的なことがありました。


到着すると社長さんが応接室に案内してくださり、
現場を熟知している職人さんも同席していました。

ただ、その職人さんはほとんど口を開きません。
私が話を振っても、一言二言を口にするだけ。

Nさんを連れてきたことで不機嫌になっているのかな・・・
と、少し心配になりながら、
「そろそろ中を見せていただいていいですか?」と
蔵の中に移動をしました。





すると少しずつ口数が多くなってきした。

ちょうど麹づくりの解説をしている時、
「経験的にこうするのが正しいと思ってるんですよ」と言うと、
Nさんは「それは理にかなっていると思います」と返します。

そして、なぜそれが理にかなっているのかを
醸造学に基づいて論理的に説明しはじめたのです。

それを聞いていた職人さんの表情がみるみる変化してきて、
今までに見たこともないくらいの満面の笑みに。

はじめてサンタクロースにプレゼントをもらった子供のような、
あっけにとられているような純粋な笑顔で、


「じゃあ、いままでやってきたことは間違ってなかったんですね!」と。





その後の二人は勝手に盛り上がっていました。

予定していた時間を大きく超えて、
「次の約束に間に合うギリギリなので」と
何度か遮る必要があるほとでした。

二人の会話を聞いていて、
私自身とても勉強になったのですが、
それ以上に、やっぱり製造の現場っていいなぁ〜っと感じていました。



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[職人醤油通信 vol.107]醤油蔵で出会った笑顔
http://www.s-shoyu.com/howto/ml/107.html

大手には旬がある/正金醤油(香川県小豆島)

正金醤油

「大手の醤油メーカーさんがつくる醤油には旬がある」と正金醤油の藤井さんは言います。

一般的には、逆の印象を抱く方のほうが多いかもしれません。大量生産ができる大手メーカーよりも、小規模で昔ながらの製法の蔵元にこそ旬がありそうな気もします。

藤井さんはとても謙虚なつくり手さん。大手の悪口を言わないばかりか、大手の研究開発技術や管理の仕方をすごいと認めています。

そして、話を伺っているとこの「旬」の捉え方に、なるほどと感じてしまうのです。



大手メーカーは一年を通して醤油をつくることができます。仕込みの条件や発酵の管理など研究に裏付けされた理論があるからです。醤油をつくる微生物が最も活動しやすい環境を整えることも可能。

短期間で大量生産、しかも同一品質を実現できるということは、醤油が一番おいしくなったちょうどのタイミングで一気に搾ることができるわけです。

逆に、小規模の醤油蔵の場合、寒い時期に仕込みをして約一年の熟成期間を経て圧搾をスタートさせますが、一度に全量を搾るわけではありません。年間を通して搾っていくので、一年熟成のものもあれば一年半熟成のものもあります。

醤油にとって一番おいしいタイミングを「旬」と捉えれば、その少し前の「走り」のものもあれば、旬を少しこした「名残」のものもあるというわけです。



旬の素材を食すときも同じはずです。一番の食べごろが「旬」であれば、出始めのものは「走り」で、旬が過ぎてそろそろお終いという「名残」があって、微妙に味わいも異なるはず。

これを醤油に置き換えると、大手メーカーは出荷のタイミングにすべてを「旬」で揃えることができるけど、小規模メーカーの場合は「走り」も「旬」も「名残」もあるというわけです。

悪くいえば味のぶれ。でも、この点が魅力だとも感じています。